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いにしえゲーム回顧録 ビール売りのお姉さんが来たよ 「ピンボール(EXTRA BALL編)」

いにしえゲーム回顧録 ビール売りのお姉さんが来たよ 「ピンボール(EXTRA BALL編)」 http://ift.tt/1ASkWOI

 

  ゲーセンには、もちろんビデオゲームがたくさんありますが、しかしゲームはそれだけではありません。機械仕掛けの愉快なマシンである、いわゆる「エレメカ」です。例えばショベルでお菓子を取るものや、「上!」「右!」などの音声に合わせて上下左右のボタンを押すゲーム、古くは「もぐらたたき」もエレメカの一種でしょう。現在ではシール機やクレーンゲームなどが代表的なエレメカと言え、昔ながらのエレメカはほとんど姿を消しました。しかしかつてのゲーセンには一大勢力を誇ったエレメカがありました。それがピンボールなのです。

  「ピンボール」ってエレメカか?というご指摘もあるでしょう。実際ピンボールは一つのジャンルであり、エレメカには含まれない、というのが一般的な定義なのですが、「どちらかと言えばアナログである」「モニターを使っていない(使っているものもあるかもしれないが)」「身体を使って遊ぶ」という点で、私には「大掛かりなエレメカ」という感じがします。

  私がゲーセン小僧だった頃、ピンボールは必ずゲーセンの一角にありました。それどころかレンタルビデオ店やボーリング場、ビリヤード場にも設置してありました。もっともプレイしている人間はあまりいなかったので、当時は既にピンボール斜陽の時代になっていたのかもしれませんが、私がひとしきりビデオゲームを遊んだあと、ゲーセンで最後に遊ぶのがピンボールでした。

 

  さて、ゲーセンでは姿を消したピンボールですが、現在は家庭用ゲーム機やPC上でビデオゲームとして再現されているので、大体どういうゲームなのかお分かりの方も多いでしょうが、そもそも「ピンボールとは何ぞや?」という方もおられるでしょうから、簡単にシステムを説明します。

  ピンボールは手前に傾斜した縦長の箱で、その中を金属のボールが跳ね回るゲームです。手前に傾斜していますから、ボールは常時手前に転がって来ます。そして一番下の穴に落ちるとミスとなります。しかしこれではパチンコと変わりませんので、ボールを弾き返す「フリッパー」というラケットがあります。これは箱の左右にあるボタンでスイングすることが出来ます。プレイヤーはボールを落とさないようにフリッパーで弾き返し続けるのですが、これだとテニスの壁打ちと変わりませんので、箱の中には様々なギミックが存在しています。ボールをぶつけると強烈に弾き返す「バンパー」、箱の中のあちこちを繋いでいる坂道「ランプレーン」、ボールをぶつけることで何らかの効果が現れる「ターゲット」、ボールが通過すると猛烈に回転する「スピナー」など、様々な仕掛けが用意されています。これらのギミックにボールをぶつけたり、通過させたりすることで点数を獲得していく、というのがピンボールというゲームなのです。基本的には1プレイは3個のボールが与えられ、全てのボールを失うとゲームオーバーです。

 

  さてピンボールというゲームには基本的にストーリはありません。映画などとのタイアップ機ならばオリジナルになぞらえたゲーム展開をしますが、そうでなければ基本的に大まかなモチーフ(秘境探検や山道ドライブなど)に沿ってゲームデザインがされるだけです。一応高得点を獲得できる「JACKPOT」を達成するのが目的と言えば目的ですが、獲得してもこれといったエンディングもありません。ひたすら高得点を目指すストイックなゲームと言えましょう。

  そして高得点を目指すためには特定の順番でターゲットを狙ったり、ランプを通過させたりすることで成立する「役(フィーチャー)」を獲得することが重要になってきます。先の「JACKPOT」も役の一つで、とてつもなく複雑な手順を達成すると高得点が得られます。どのくらい高得点かというと、例えばバンパーにぶつけると一回あたり大体1000~5000点くらい獲得できますが、JACKPOTは5000000~10000000点くらい獲得できます。この役を取れるかどうかで、ハイスコアランキングに乗るかどうかがほぼ決まるのです。他にも「MULTIPLIER(得点倍率が上がる)」とか「EXTRA BALL(残りボールが1個増える)」とか「SPECIAL(クレジットが1つ増える)」など、得点アップに影響する様々な恩恵を受ける事が出来ます。つまり、ピンボールはどれだけ役を取得できるかを競うゲームであり、自分がどれだけ役を取得出来るだけの腕を持っているのかを競うゲームでもあるわけです。

 

  さてここで、私が最初に触れたピンボールマシンをご紹介しましょう。場所は近所のレンタルビデオ店で、小さなクレーンゲームやガムボールマシンと共に、店の隅にありました。確か「The Machine」というゲーム名だったと思いますが、盤面にはメカニカルな女性型ロボットがアメコミ調に描かれていました。

  初めてピンボール台を見た私の第一印象は「怪しさ」でした。機械であるロボットに女性性を設定していること自体に何とも言えない背徳感を感じましたし、盤面に描かれた女性型ロボットの絵が、レトロフューチャーなのにどこかコケティッシュで、そこがなんともいびつな人間の欲望を表現しているようで、不安感を煽るのでした。しかし怪しげなものに触れてみたいのが人間というもの。私は一応ファミコンの「ピンボール」はプレイしていたので、ゲームの大体の流れは分かっていました。とにかくフリッパーを動かして、ボールが落ちないようにすればよい。しかしこのあちこちでピカピカ光っているランプは何だ?そう、役の取り方が分からないのです(普通は盤面左下にインストカードがあるものなのですが、ここにはなかったのです)。それでも初めて触れる本物のピンボールは私を大いに興奮させました。バンパーの振動、ボールの意外な弾道、ランプの眩さ…。ビデオゲームにはない魅力があり、それはマシンのアナログな挙動がどこか夜の縁日のような喧騒を思わせ、つまりはやはり「怪しさ」であり、それはこのピンボールマシンを攻略していくにつれ強まっていき、私もまたその怪しさにどっぷりと浸かっていくのでした。

   やがて盤面ランプによるガイドや、学校で習ったつたない英語力で、少しずつ役の取り方を理解していった私は、盤面上部のロボットの顔面部分が気になりました。よく見てみれば、ロボットの口の部分に穴が開いていて、ボールをそこへ入れろと言わんばかりです。そしてそこへは少し強めに打たないと登り切れないランプレーンが繋がっていました。何度かここを登ったことはありますが、しかし顔面部分は通過して、その横の穴に入って、下のバンパー部分へと行ってしまうのです。

 …あそこへはどうやったら行けるのか?何度もトライしていたある日、いつものようにボールはランプレーンを登り、ロボットの顔面部分を通過し、またバンパー部分へと行きました。そして戻ってきたボールを何気なしに打ち返すと、ボールは再びランプレーンを登り、今度はロボットの顔面部分へと転がっていきました。そこで私ははっとしました。答えは「ランプレーンに二回通すこと」なのか!そしてボールはロボットの口に吸いこまれました。一瞬暗くなる盤面。正面のセグメント表示部に文字が現れ、その言葉があたりに響きました。

「I can speak…」と。

 

 

  しまった、紙が尽きた。続きます。

 

posted by todome